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労働保険料とは?計算方法や申告・納付時期についてわかりやすく解説

労働保険料とは?計算方法や申告・納付時期についてわかりやすく解説

監修者:蓑田 真吾 みのだ社会保険労務士事務所
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この記事でわかること・結論

  • 労働保険料とは
  • 労働保険料の計算方法
  • 労働保険料の申告と納付方法

雇用保険と労災保険(労働者災害補償保険)はまとめて労働保険とも呼ばれています。つまり、労働保険料とは雇用保険料と労災保険料のあわせたものを指します。

納付に関しては合算で扱われていますが、労働保険料の計算は雇用保険料と労災保険料をそれぞれ算出する必要があります。使用者と労働者の負担額に関しても異なるためしっかりと理解しておきましょう。

この記事では労働保険料の基本知識から、対象となる人や労働保険料の計算方法について解説していきます。

労働保険料とは

労働保険料とは

労働保険料とは、雇用保険料と労災保険料の総称です。1名でも労働者を雇用している事業主(会社など)は労働保険に加入する義務があるため、労働保険料を納めなければなりません。

POINT
パートタイムやアルバイトの納付対象

労働者はパートタイムやアルバイトである場合も同様です。業種や規模などにも決まりはなく、1名でも働いている方を雇っている企業は、労働保険の加入義務そして労働保険料の納付義務があります。

労災保険(労働者災害補償保険)と雇用保険はそれぞれ制度自体や保険給付などが別ですが、保険料に関しては「労働保険料」という形で合算して申告・納付をすることになっています。

雇用保険とは

雇用保険とは、労働者が労働の継続が難しくなった場合や失業した場合などを対象に、再就職までの生活と雇用をサポートするための保険給付制度です。雇用保険料に関しては、事業主と労働者の両者が負担をします。

労災保険とは

労災保険とは、正式名称は「労働者災害補償保険」であり、業務中・通勤中に遭った労働災害(けがや病気、障害や死亡など)を対象に給付する保険制度です。1名でも労働者を雇用している場合は加入義務があり、労災保険料は全額事業主が負担します。

労働保険の加入対象者

労働保険の加入対象者

雇用保険と、労災保険(労働者災害補償保険)をあわせて労働保険と呼びます。それぞれの加入対象者には違いがあるため解説します。

雇用保険の加入対象者

雇用保険は、事業主のもとで働いていれば必ずしも加入するという訳ではありません。雇用保険への加入は、以下の加入条件を満たす必要があるためチェックしておきましょう。

雇用保険の加入条件

  1. 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
  2. 31日以上の雇用見込みがあること
  3. 昼間学生ではないこと

上記を満たしていれば、雇用形態に関係なく雇用保険の加入対象者となります。パートタイム・アルバイトの方はもちろん、契約社員でも同様に加入する必要があります。

しかし、派遣社員の場合は派遣元会社の雇用保険に加入することになるため注意しましょう。他の対象外者には会社役員などが該当します。

労災保険の加入対象者

労災保険の加入対象は主に事業所です。冒頭でも解説したとおり1人でも労働者を雇っている事業所は加入が必要です。

1日だけのアルバイトを雇ったとしても加入義務が発生する?
雇用形態や雇用日数にかかわらず加入の必要があるため、1日だけのアルバイトを雇ったとしても加入義務が発生します。

しかし、労災保険には特別加入制度が設けられており、一定の要件を満たしている中小企業などの事業主は労災保険への加入が認められています。

労働保険料の計算方法

労働保険料の計算方法

労働保険料とは、雇用保険料と労災保険料の合算のことを指します。申告や納付は、一括でおこないますがそれぞれの保険料率が異なります。

労働保険料の計算方法

どちらも基本となる年間の「賃金総額」に保険料をかけた金額が保険料として納める額になります。賃金総額に含まれるのは、

  • 給与
  • 賞与
  • 残業代
  • 通勤手当

などがあります。役員は保険対象外であるため、役員報酬などは賃金総額には含まれません。雇用保険と労災保険それぞれの保険料率を見ていきましょう。

雇用保険料の計算方法

雇用保険の保険料率は事業内容によって3つに分けられており、さらに毎年見直されて変更があります。厚生労働省の公式Webサイトで公開されている2023年度(期間は2023年4月1日〜2024年3月31日まで)の雇用保険料率を参考に表にまとめてみました。

事業 \ 負担者 労働者負担 事業主負担 保険料率
一般事業 0.6% 0.95% 1.55%
農林水産や
清酒製造事業
0.7% 1.05% 1.75%
建設事業 0.7% 1.15% 1.85%

酪農・養鶏場・養豚場・牛馬育成・園芸・特定の船員を雇用する事業などは「一般事業」の保険料率が適用されます。

雇用保険料の負担は、事業主と労働者の双方がそれぞれの負担割合に応じて保険料を負担します。上記の表を参考に、一般事業に該当する事業所で働いている賃金総額が300万円(賞与込み)の従業員を例に計算しています。

一般事業に該当する事業所で働いている賃金総額が300万円(賞与込み)の従業員の場合

「300万円 × 1.55% = 46,500円」が雇用保険料総額となります。
そのうち事業主負担が「300万円 × 0.95% = 28,500円」であり、
労働者負担が「300万円 × 0.6% = 18,000円」という計算になります。

労働者が負担する雇用保険料は毎月の給与から差し引かれます。

労災保険料の計算方法

労災保険料の保険料率は事業内容ごとにかなり詳細に分けられています。こちらも厚生労働省の公式Webサイトで公開している「労災保険料率」を参考に計算しましょう。

労災保険料率

先ほどの賃金総額が300万円(賞与込み)の従業員の例に、働き先が金融業であった場合の計算をみていきましょう。

賃金総額が300万円(賞与込み)の従業員で、働き先が金融業であった場合

労災保険料は「300万円 × 0.25% = 7,500円」になります。

労災保険料率は2018年から変更はありません。上記の労災保険料率は雇用保険料率とあわせて掛け算をしても良いですが注意点があります。

たとえば、雇用保険に加入していない労働者(短時間労働者など)を雇っているケースです。この場合は賃金総額が、

  • 労災保険は全労働者の賃金総額
  • 雇用保険は全被保険者労働者の賃金総額

とそれぞれ異なってくるため、別々で計算をして保険料を算出してから合算作業をする必要があります。

労働保険料の申告と納付

労働保険料の申告と納付について

労働保険料は毎年4月1日から翌年3月31日までを保険年度とし、その期間で支払われた賃金総額に対して保険料率をかけて計算します。そして計算した概算の労働保険料はその年の6月1日から7月10日までに申告と納付をする必要があります。

そして次年度の6月1日から7月10日では、前年度で概算だった金額の確定申告と納付をおこないます。このことを年度更新と呼び、保険料のズレなどはこのタイミングで調整します。さらに、次年度以降はその年の概算保険料の申告と納付もあるため忘れないようにしましょう。

労働保険料の申告と納付チェックリスト

初年度にやること
1期目にやること
  • 1期目分の概算申告と納付
2期目にやること
  • 2期目分の概算申告と納付

毎年、概算の金額を仮払いする際は労働保険概算保険料申告書という書類を労働基準監督署や労働局に持参か郵送で提出します。

労働保険料の申告と納付は、時期も6月7月であるため忘れてしまう可能性も高いかもしれませんが、期限を守らないと追加徴税になってしまうため必ず覚えておきましょう。

まとめ

雇用保険労災保険(労働者災害補償保険)を総称して「労働保険」と呼びます。そのため、労働保険料は雇用保険料と労災保険料(労働者災害補償保険)を合算したものを指します。両者の保険は加入対象者や保険料の計算方法が若干異なるため、企業担当者の方はしっかりと覚えておきたいところです。

派遣社員や役員以外であれば、パートタイム・アルバイト・契約社員問わず雇用保険には加入します。自身がどのくらい保険料を負担しているのか気になる方は計算方法など再確認しておきましょう。

労働保険料の申告については、初年度以降はその年の概算と前年度の確定申告の2つをおこないます。時期も6月〜7月とキリの良い時期ではないため、忘れないようにしっかりと労働保険料の申告・納付をしましょう。

みのだ社会保険労務士事務所 監修者蓑田 真吾

1984年生まれ。社会保険労務士。
都内医療機関において、約13年間人事労務部門において労働問題の相談(病院側・労働者側双方)や社会保険に関する相談を担ってきた。対応した医療従事者の数は1,000名以上。独立後は年金・医療保険に関する問題や労働法・働き方改革に関する実務相談を多く取り扱い、書籍や雑誌への寄稿を通して、多方面で講演・執筆活動中。
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