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導入事例

なぜ社労士が組織拡大するためにDXは避けて通れないのか?


社会保険労務士事務所リンク・サポート
平野さま

INTERVIEW

「社会保険労務士事務所リンク・サポート」について教えてください。

平野さま:開業は2007年8月なので、今年で15年目の事務所です。僕は20歳のときに社労士試験に合格し、社労士事務所に就職して3年9カ月を過ごしました。その後、24歳で独立して開業し、事務所は4回移転しています。現在の事務所は18名体制で運営しています。

24歳で事務所を一から立ち上げられたんですね。どのように規模拡大されてきたのでしょうか?

平野さまもともと勤めていた社労士事務所は年金手続きをメインでやっていたので、一度も労務管理をしたことがない状態で独立することになりました(笑)。社労士事務所のビジネスモデルについてもわかっていなくて、「とりあえず飛び込み営業だろう」という安易な発想から、家庭用プリンターで印刷した名刺を持って、手当たり次第にいろんな企業を回りました。

そしたら当然のことながら全くうまくいかず(笑)。たまたま伺った会社で「そうそう、離職票を作って欲しかったんだ」と仕事を依頼されることは、まずありませんからね。

でも、じっくりと経営者の方にお話を聞いていると「求人が全然うまくいかなくて」「労災事故があったんだけど」など、「経営者が困っていること」が浮かび上がってきたんです。これを受けて、A4用紙に経営者の方から聞いた「困っていること」を書き連ね、「こういうことにお困りではありませんか?」というタイトルをつけて、名刺と一緒に渡したり、ポスティングしたりするようにしました。

それから2カ月ぐらい経つと、給与計算担当者が退職するという企業から「給与計算できますか?」という声がかかって、仕事を得ました。給与計算は、まったく経験がなかったんですけど(笑)。

この2カ月で僕が強く意識したのは、「就業規則が欲しい方」はいないということです。就業規則が欲しい方は、それ以前に従業員トラブルを経験するなどして、ルール作りが必要だと感じています。求める商品の一つ手前にニーズがあることを前提に、問題をわかりやすくして話をすると、仕事になると学びました。

その学びを得てからは、営業活動ではなく主に紹介で顧問先企業を増やしていったというかたちでしょうか?

平野さまそうですね。営業をやっていたのは最初の2カ月間だけです。セミナーやFAX・DMなどでの営業活動はおこないましたが、主に紹介でお客さんが増えていきました。

従業員の方も増え、現在は18名とのことですが、組織化される前と後で経営戦略は変化しましたか?

平野さま規模を拡大すればするほど、「当たり前のことを当たり前にやる」ということが難しくなります。労務手続きについていえば、1万件処理して1件もミスがない状態を作るのはすごく大変です。人間が携わる以上、組織を大きくすればするほどミスは出てくるので、「どのようにミスが起こらないようにできるか」を常に考えてきました。

この問題を解決しようと思ったら、やはり人間の手が入らない仕様というか、「なるべく機械にやってもらう方向」に向かいましたね。現在はツールを作ったり、自動化を検討したりといった、DX方面に力を入れています。

いつ頃からDXを意識し始めましたか?

平野さま2019年頃からです。この頃から「どうやったらミスが防げるのか?」「効率化できる業務はあるか?」という視点で毎週会議をおこなうようになりました。オフィスステーションを活用しだしたのもその頃からです。

オフィスステーションを活用しだしたきっかけは何だったのでしょうか?

平野さまデジタルにまつわる状況は日々変化しているので、3年前にソフトで問題なくおこなっていたことでも、業務を見つめなおすと「本当は不要では?」と気付くことがあります。たとえソフトを導入していたとしても、事務所のやり方が変わらなければ効率化はできません。「オフィスステーション Pro」の活用は、業務のやり方を見直し、目指すやり方が実現できるシステムやソフトを検討していった結果といえます。

現在、労務手続きに関しては複数のソフトを併用されているのでしょうか?

平野さまほぼ「オフィスステーション Pro」に切り替えているんですが、データを見るために別のソフトも残しています。「オフィスステーション Pro」に全面的に変えようと決めたのが1年ほど前で、そこから「毎月何件」と決めてデータ移行をおこないました。

ありがとうございます。切り替えを決断されたきっかけは何だったのでしょうか?

平野さま試しに使ってみたときに、すごく使いやすかったんです。画面の設計もそうですし、電子申請の公文書をそのままクラウドに保存でき、ソフト内で取り出せるというのが画期的だと感じました。当時は公文書の扱いにくさを感じることが多かったので。

切り替えをおこなううえで難しかったところはありますか?

平野さま従業員の理解を得ることですね。そのためには新しいソフトを使うことの意味を、「今後のトレンド」や「従業員のメリット」という文脈で語る必要がありました。

たとえば「クラウドソフトに変えれば、どこからでも仕事ができるようになるから、君たちの働き方が間違いなく変わる」「今後はいろんな会社がどんどん便利なツールを作っていくから、ある程度は他社ツールとAPI連携できるところじゃないと、その便利さの波に乗り遅れる」といった説得をしました。

常に会議をし、デジタル化を進める担当者を決め、ビジョンをしっかり共有したためか、デジタル化についていけなくなる従業員は出ませんでした。

お話を聞いていると手続き関係の顧問先企業が多い印象ですが、現在、どのくらいの数でしょうか?

平野さま全顧問先で300強ぐらいです。うち約3割がアドバイザリーで、7割が手続き関係、給与計算業務は割合としては少ないですが、数十社から受けています。

手続き関係がメインなのですね。では、その手続きにおいて「オフィスステーション Pro」を活用することで、何か変化はありましたか?

平野さま「オフィスステーション Pro」を導入してからの事務所の生産性は、体感ですが昔に比べると2倍以上にはなっています。入退社の手続きについては、昔なら企業から紙で情報をもらって、ソフトに手入力して、電子申請して、戻ってきたものを郵送で送る……という流れでした。そのときはただ目の前の仕事の処理に追われる状態でしたが、今は、仕事中に「この仕事は効率化できるか?」と議論する余裕があります。

極端にいうと、以前は100名の従業員のデータをもらったら、それを何時間もかけて手入力で登録していました。でも効率化について考えることができれば、「CSVファイルをもらってソフトで吸い上げる」という方法が可能になり、数分で作業が完了します。昔は、その効率化について考える時間がなかったんです。「考えるくらいなら打ち込みます」みたいな(笑)。

社労士事務所のデジタル化が進むと、そこについていけない顧問先企業も出てくると思うのですが、そのあたりはどう対応されていますか?

平野さま確かに、社労士事務所でデジタル化を進めることは大切ですが、それが事務所側のエゴになってはダメだと考えています。企業内に専任で担当されている総務の方がいれば、「こういう風にお願いします」とお伝えできるのですが、総務の方がいない企業の場合は経営者の方にお願いすることになるので、それが難しいんです。でも、そういう企業で入退社の手続きが多いかといえば、そこまでありません。

年に数件の入退社手続きであれば、無理に手続きツールの導入をおこないません。逆に、ロット数が多いところは効率化すると効果が出るので、うちとしてはそういうところからツールを導入してデジタル化をおこなってもらっています。

ただ、手続きツールを入れられないところでも、連絡方法を電話からクラウドサービスに変えてもらうなど、「効果が感じられる、かつ可能なところからデジタル化」をおこなっていますね。

では、顧問先のデジタル化を推進する上で、工夫していることはありますか?

平野さまやり方を変えようとすると、最初はみんな「今のままでも問題ない」と嫌がります。でも、やり方を変えて2週間もすると「やってよかったね」となるんです。それがわかっているので、やり方を変えると何が便利になるのかを、根気よく伝え続けます。

あとは、「顧問先企業のやりやすさ」と「うちのやりやすさ」のちょうどいいところを探しています。たとえば、「オフィスステーション Pro」を使うには専用フォーマットのExcelデータが必要ですが、それを企業側に作ってもらうのでなく、企業がすでに持っているExcelファイルを送ってもらい、事務所側でマクロを使ってフォーマットを変換します。

企業によってExcelファイルのフォーマットはいろいろあると思うのですが、事務所の担当者の方がマクロを作っているのでしょうか?

平野さまはい。Excelやマクロが得意な従業員がいるので、お願いしています。僕は全体像を考えるのが得意なので、「理論的にこういうことができるはず」というのを伝えて、あとはその担当者に必要なものを作ってもらったり、「企業に合うソフト」を選んでもらったりしています。

先ほど会議を常におこなっているとありましたが、どのような会議をされているのでしょうか?

平野さまお客さんにどのような提案をしていくかなど、意見を吸い上げる「提案会議」と、デジタルトレンドやソフトなどの情報を収集して社内のデジタル化を推進する「DX会議」、そして「福利厚生委員会」を実施しています。

デジタル化の推進会議をおこなう社労士事務所は増えていますが、「福利厚生委員会」を実施されている社労士事務所は珍しいですよね。詳しく教えてもらえますか?

平野さま今後「経済がずっとよくなり続ける」という状況は考えづらいので、永遠に給料を上げ続けることはできません。そうなると、企業の経営戦略は「社員にとって居心地のいい会社を作ること」にシフトします。この考えでいくと、社労士事務所として福利厚生を充実させるメニューを持っていた方が、将来的にいいはずです。

今は健康経営銘柄や退職金制度、お菓子の持ち込みなど、福利厚生の内容を洗い出して、事務所に取り入れるかをいろいろ試しながら選別しているところです。最終的に企業の規模と予算に応じてそれらを提案できるかたちにしたいな、と。

そのために、石垣島に誰でも使える保養所も作りました。顧問先企業の経営者にも使ってもらって、DXのよさを感じてもらっています(笑)。

将来的なビジョンをかなり重視されているんですね。現在、経営戦略のなかで最も力を入れていることは何でしょうか?

平野さま間違いなく「DX」ですね。バックオフィスをいかに効率化できるかが重要だと考えています。

これまで社労士の仕事は労務管理や、就業規則というルールを作ることでした。でも、国が求めているのは「働き方改革」……、言い換えると「勤務時間を時短し、生産性を上げろ」ということです。このためにはバックオフィスを効率化すること、つまりDXが必要なんです。

うちの事務所ではテレワークが可能になり、時間に縛られず働けるようになったほか、時間に余裕ができたことで「さらなる効率化を考えること」が可能になるなど、いい循環を作り出せました。

最初の話に戻りますが、僕は仕事をする上で「経営者の役に立つか」を非常に重視しています。ただ「働き方改革をして労働基準法を守りなさい」と言うのではなく、僕たちがデジタル化を先んじておこない、「どうやったらDXで働き方改革ができるのか」を提案していきたいと考えています。

は「社労士の1号業務・2号業務はなくなってくる、これからの社労士は3号業務に力を入れなければならない」という意見について、どう思われますか?

平野さま「これからの社労士は3号業務だ!」という意見は、20年前からありました(笑)。

ただ、社労士資格を持っていて、3号業務だけをやっている方というのは、塾の講師や講演専門の方ぐらいだと思います。

僕は「1号・2号業務がきっちりできてこそ、3号という部分で特色が出てくる」という考えです。1号・2号業務は社労士事務所にとって血液のようなものです。今後もなくなることはないし、絶対に間違えずにやり続ける必要があり、そのためにはシステムの活用やDXが必要です。そして事務所がDXすることで、コンサルティングのかたちで企業のDX支援をしていきたいです。そのためにデジタルトレンドを追い続けています。

本日は貴重なお話をありがとうございました!