基礎知識
従業員が給与明細を紛失! 対応方法や再発行・保管の義務、想定トラブル・対処法:まとめ

人事労務担当者は、従業員が給与明細を紛失した際の対応について理解しておきましょう。
給与明細の再発行に関しては、以下のポイントを意識すると理解が深まります。
- 給与明細の発行・保管に関する法律的な義務の有無
- 従業員に給与明細が必要となるケース
- 給与明細を紙やエクセルで保管しなくて済む方法
- 企業は給与明細の発行・保管をおこなう義務がある
- 給与明細を再発行する義務はないが、対応する企業が多い
給与明細を紛失したときの対応
従業員への給与明細の発行は、所得税法第231条によって義務づけられています。
所得税法では、給与を支払う者は給与の支払を受ける者に支払明細書を交付しなくてはならないと定められています。したがって、企業には従業員に給与明細書を交付する義務があり、給与を支払う際に交付しなければなりません。
【引用】労働条件・職場環境に関するルール 給与明細書(所得税法第231条)
企業は所得税法によって、従業員に対して給与明細の発行が義務づけられています。
給与明細再発行の義務はない
企業は従業員に対して給与明細の発行義務が定められていますが、給与明細の再発行は法律上、義務ではありません。
再発行の義務はありませんが、従業員からの依頼を受けて給与明細を再発行する企業は多いです。
従業員に給与明細を再発行するために、しっかりと給与明細を保管しておきましょう。
- 紙の給与明細をファイリングして保存
- 紙の給与明細をスキャンしてPDFデータで保存
- エクセルで作成して保存
- クラウドサービスを利用して保存
給与明細の保管義務はない
企業には給与明細自体を保管する義務はありませんが、次の書類(労働三帳簿)は保管しなければなりません。
-
労働者名簿
従業員の氏名や生年月日、住所、入社年月日など、個人情報が記載されている書類 -
賃金台帳
従業員の基本給や労働日数、賃金計算期間、時間外労働時間など、給与計算に必要な情報が記載されている書類 -
出勤簿
従業員の出退勤状況や、休暇取得状況などが記載されている書類
労働三帳簿は3年間の保存義務が定められています。
労働三帳簿のほかに、税に関する書類は、7年間の保管が義務づけられています。
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- 給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書
- 源泉徴収簿
給与明細の保管義務はないが、労働三帳簿や税に関する書類は保管義務がある。
従業員が給与明細を必要とする場合
従業員に給与明細が必要となる場合は以下の通りです。
-
年金保険料の確認
給与明細には、毎月の厚生年金保険料が記載されている。保険料は従業員が将来受け取る年金額の基準となります。 -
確定申告
確定申告の際、従業員本人の収入の証明として利用できます。 -
雇用保険の給付
従業員が退職後に失業給付を受け取る、再就職手当を受け取る場合、給与明細が必要です。 -
与信審査(住宅・教育ローン)の証明
従業員が与信審査を受ける際の収入証明として提示する場合に必要です。
給与明細は、従業員の事情により必要になるため、従業員には給与明細の使い道と一緒に一定期間保管するように案内しましょう。
給与明細の再発行に伴う想定トラブルと対処法
給与明細の再発行に関連して、以下のようなトラブルが想定されます。
- 給与明細再発行の問い合わせ対応
- 過去の給与明細の探索や従業員への個別説明
想定されるトラブルを防ぐために、対処法を検討しておきましょう。
- 全従業員分の給与明細の保管
- 従業員に給与明細を保管しておくように注意喚起
- 給与明細クラウドシステムを導入し、給与明細作成・保存を効率化
まとめ
給与明細を紛失した従業員から再発行を求められたとき、すぐに対応できるように、準備しておきましょう。
- 給与明細の発行には法律的な義務がある
- 従業員は、さまざまなケースで給与明細が必要になる
- 企業は従業員の給与明細データを保管しておくと、再発行がスムーズ
- 給与明細クラウドシステムを導入することで、再発行をはじめとする給与明細関連業務の効率が上がる
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