基礎知識

給与明細の記載事項の書き方とは? 勤怠・支給・控除など項目徹底解説!

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労働基準法では給与明細の記載や作成、受け渡しは義務付けられていません。
しかし、所得税法や健康保険法、厚生年金法では控除額を被保険者に通知する義務があるため、従業員に給与明細を発行することが義務となっています。

この記事でわかること
  • 給与明細に記載する項目
  • 勤怠項目、支給項目、控除項目それぞれの内容
  • 給与明細に関する作業を大幅に効率化・自動化する方法

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給与明細に記載する項目

給与明細を理解するには、以下のポイントを押さえておきましょう。

この記事で意識しておきたいポイント
  • 給与明細には大きく3つの項目を記載する必要がある
  • 支給項目には基本給や時間外手当(残業代)、各種手当が含まれる
  • 控除項目には社会保険や税金が含まれる

では、給与明細の記載項目について、解説します。

給与明細に記載する項目
  • 勤怠項目
  • 支給項目
  • 控除項目
  • 課税対象額と差引支給額

課税対象額とは、総支給額から非課税である通勤手当と社会保険料の合計を差し引いて算出します。

差し引き支給額とは、従業員が実際に受け取る金額を指します。

課税対象額=総支給額-非課税手当(通勤手当など)-社会保険料合計

非課税手当には、「通勤手当のうち一定金額以下のもの」や「転勤や出張などのための旅費のうち通常必要と認められるもの」、「宿直や日直の手当のうち、一定金額以下のもの」が含まれます。

社会保険料には、健康保険や介護保険、厚生年金保険や雇用保険など被保険者として負担する保険料が含まれます。

給与明細の勤怠項目部分

勤怠項目部分には、主に以下の内容を記載します。

労働日数 給与集計期間内の所定労働日数
出勤日数 給与集計期間内に出勤した日数
欠勤日数 給与集計期間内に欠勤した日数
有給休暇日数 給与集計期間内に有給休暇を取得した日数
遅刻回数 給与集計期間内に遅刻した回数
早退回数 給与集計期間内に早退した回数
時間外労働 給与集計期間内に残業した時間

給与明細の支給項目部分

支給項目部分には、基本給や時間外手当(残業代)に加え、資格手当や家族手当といった各種手当を記載します。

総支給額には、全項目を合計した金額を記載します。

基本給や時間外手当(残業代)

基本給とは、時間外手当や通勤手当、インセンティブなど各種の手当を含まない、ベースとなる基本賃金です。

基本給は企業の給与規定や勤続年数、年齢などを考慮し、従業員と企業間の雇用契約により決定します。

多くの企業では、基本給が賞与や退職金を計算する際の基準となります。

時間外手当(残業代)とは、従業員が企業の定める所定労働時間を超えて働いた際に、支払われる賃金です。
法定労働時間を超えた場合は、1.25倍の割増賃金が支払われます。

各種手当

給与明細の各種手当として、以下が挙げられます。
企業によっては導入していない手当もあります。

各種手当の例
  • 資格手当
  • 家族手当
  • 通勤手当
  • 役職手当

資格手当

業務に活かせる資格を取得した場合に、企業が任意で支給する手当です。
従業員のスキルアップインセンティブとして、資格内容に応じ、一定金額を支給します。

家族手当

従業員が扶養する家族に対し、基本給とは別に支給する手当です。
従業員の生活を支援する目的で支払います。

一般的には税法上の扶養配偶者となる年収103万円以下の家族を対象としている企業が多いようです。

通勤手当

従業員が会社まで通勤する際にかかる費用を、手当として支給します。
公共機関を利用した場合、一カ月あたり15万円(マイカー利用による交通費支給分を含む)までなら非課税となります。
自家用車を利用した場合、距離によって上限が変動するため、限度額を超えると課税されます。下記の表をご確認ください。

▼通勤手当の非課税限度額
通勤手当の非課税限度額

【引用】通勤手当の非課税限度額の引上げについて – 国税庁

役職手当

役職手当とは、従業員の役職に応じて支給される手当です。
あらかじめ賃金規定(給与規定)で金額を決めておき、従業員の昇進や降格に応じて金額が変動します。

労働基準法では、就業規則の賃金規定に各手当の決定方法を記載しなくてはならないとされていますが、金額の記載は求められていないため、各企業における役職手当の決定方法を記載すれば問題ありません。

役職手当の金額が決まっていない場合は、「役職手当は職責等を考慮して、各人ごとに定める」など、抽象的な決定方法を就業規則に記載しても構いません。

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給与明細の控除項目部分

控除項目部分には、社会保険料や税金など総支給額から差し引く内容を記載します。
控除項目がある場合、企業側に給与明細を作成する義務が生じます。

社会保険料

社会保険料には、以下の項目が含まれます。

社会保険料の種類
  • 健康保険
  • 介護保険
  • 厚生年金保険
  • 雇用保険

健康保険

従業員やその家族が病気やケガをして医療機関にかかった際に、治療や投薬にかかる医療費の負担を軽減するための保険です。

病気やケガにより休業した際に支給される傷病手当金、出産した際に支給される出産育児一時金などの給付金が用意されています。

健康保険料=標準報酬月額×保険料率÷2
※企業と従業員が折半で負担します。

介護保険

原則として、40歳以上になると加入が義務となる医療保険です。
40歳から64歳の間は介護保険第2号被保険者にあたり、一般保険料に介護保険料を上乗せして差し引きします。

65歳以上(第1号被保険者)の場合、勤務している従業員であっても居住地の市区町村に本人が保険料を納めます。

介護保険料は健康保険料同様、企業と従業員が折半で負担します。

厚生年金保険

厚生年金保険とは、従業員の定年退職後の生活保障を目的とする老齢年金(公的年金)や、従業員が死亡した場合に支給される遺族年金、現役中に障害を負った場合に支給される障害年金など、従業員や家族の生活を保障するための保険です。

国民年金の上乗せ部分にあたり、公務員や会社員などが加入します。
保険料は企業と従業員が折半で負担します。

雇用保険

従業員の失業に備えて加入する保険で、雇用の安定や就職促進のために失業等給付や教育訓練給付などが支給されます。

雇用保険は労災保険(労働者災害補償保険)と総称して労働保険と呼ばれており、雇用保険と労災保険をまとめて労働保険料と呼ばれています。

労災保険は事業主がすべて負担する義務があるため、給与明細から控除されることはありません。

雇用保険料は事業者と従業員双方で負担しますが、健康保険料のように折半ではなく、それぞれ料率が決まっています。

▼雇用保険料負担率

事業者 0.6%
従業員 0.3%

税金

給与明細では、所得税と住民税を控除します。

所得税

所得税とは、従業員の1年間すべての所得に対し課す税金です。
毎月の従業員の給与から所得税を差し引き、従業員の代わりに源泉徴収として税務署に納付します。(事業者の義務)

ただし、最終的な所得税の額は1年間の所得により変動するため、毎月給与から控除する所得税はあくまで見込みの金額です。
源泉徴収した所得税は12月の年末調整で清算し、実際の金額より多く納付していた場合は従業員に還付されます。

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住民税

住民税は、従業員が1月1日時点で住民票のある自治体に納める税金で、市区町村民税と都道府県民税を合わせた税金です。

前年度の1月から12月の所得額に応じて課税され、翌年の6月から12か月に分割して徴収(給与天引き)します。
所得税が当年度の所得額をもとに計算して当年に納付するのに対し、住民税は前年度の所得を計算して当年に納付します。

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給与明細の記載項目:まとめ

給与明細の作成業務は、以下の流れでおこないます。

給与明細の作成の流れ
  • 勤務時間の集計
  • 時間外手当(残業代)の集計と計算
  • 通勤手当や家族手当など手当の計算
  • 総支給額の記載
  • 社会保険料の計算
  • 課税対象額の計算
  • 所得税の計算
  • 住民税の計算
  • 控除額の記載
  • 差し引き支給額の記載

給与明細の作成時に、計算ミスや記載ミスなどがあれば、従業員に不信感を与える原因となります。

また、社会保険料や税金は定期的に改定が行われるため、最新の情報を経理担当者が確認し、数値を入力しなくてはなりません。

従業員と円滑な関係性を保つためにも、法改正への自動対応が可能な給与明細作成のシステム化がおすすめです。

給与システムと連携することで、人的ミスを防ぐことができ、担当者の業務負担も削減することができます。

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