基礎知識
年末調整関連の申告書や提出書類の書き方は? 書く前に準備すべき書類も紹介【見本付き】

従業員の毎月の給与から源泉徴収した所得税は、年間に支払う給与額が確定したあと、納めるべき税額を一致させるため、企業側で「年末調整」をおこなう必要があります。
この記事で分かること
- 事前に準備・確認すべき内容
- 年末調整に必要な各申告書や提出書類の種類とそれぞれの書き方
- 年末調整の対象となる従業員の条件
- 年末調整に必要な各申告書や提出書類のダウンロード先
- 年末調整の関連書類・申告書作成時に起こりうるトラブルと対処方法
この記事で意識しておきたいポイント
- 要件に該当する従業員によって必要な書類・申告書や記入箇所が異なる
- 令和2年から様式が変更される申告書がある
- 書類・申告書によって提出先が異なる
年末調整の事前確認・準備事項
対象外となるケースを除き、正社員やアルバイト、学生や未成年を区別することなく、会社から給与を支払っている全従業員に扶養控除等申告書を提出してもらい、年末調整をおこないます。
年末調整の対象外となるケース
- 複数の会社で働いている場合
- 年末に会社に在籍していない
- 1年間の給与が2,000万円を超えている
- 災害減免法により、その年度の所得税の源泉徴収の徴収猶予や還付を受けている
年末調整では、回収した申告書の以下の内容を準備・確認しておきましょう。
年末調整前の確認・準備事項
- 年末調整をした翌年の1月1日時点で実際に住んでいる住所
- 扶養親族や障害者などが控除対象かどうか
- 子どもが控除対象となる16歳以上かどうか(障害者の場合は16歳未満も控除対象)
年末調整に必要な申告書の書き方
年末調整に必要な各控除申告書の書き方を画像付きで解説します。
控除申告書の種類とPDFダウンロード先まとめ
- 扶養控除等申告書 ※1
- 保険料控除申告書 ※1,2
- 配偶者特別控除申告書 ※1,2
- 住宅借入金等特別控除申告書 ※3
※1. 上記はすべて国税庁の公式HPからのダウンロードとなります。
※2. 令和2年からはレイアウトの調整がおこなわれる可能性があります。以下、令和2年以降のレイアウトが発表されていない申告書に関しては、令和元年分を例に解説します。
※3. 住宅借入金等特別控除申告書は、税務署から従業員の自宅宛に発送されます。
扶養控除等申告書
源泉控除対象配偶者、障害者に該当する同一生計配偶者および扶養親族がいない場合は、最上部の欄のみ記入
源泉控除対象配偶者や障害者に該当する同一生計配偶者および扶養親族がいる場合、以下を記入
同一生計配偶者および扶養親族がいる場合の記入事項
-
源泉控除対象配偶者(A欄)
給与所得者の合計所得(見積)が900万円以下で、生計を一にする配偶者の合計所得が95万円以下の場合に記入 -
控除対象扶養親族(16歳以上)(B欄)
満16歳以上の控除対象扶養親族を記入※70歳以上のうち、給与所得者または配属系の直系尊属で同居している場合は「同居老親等」に、それ以外の場合は「その他」にチェックを付ける
※19歳以上23歳未満の場合は「特定扶養親族」にチェックを付ける。 -
16歳未満の扶養親族
該当者がいる場合に記入 -
障害者、寡婦、寡夫又は勤労学生(C欄)
給与所得者または控除対象配偶者、控除対象扶養親族が該当する場合に記入 -
他の所得者が控除を受ける扶養親族等(D欄)
同一世帯に2人以上の所得者がいる場合に記入
※扶養控除を受けられるのは、世帯で一人のみ -
単身児童扶養者
児童扶養手当の支給を受けている児童と生計を一にしていて、
「現在婚姻の届出や事実婚をしていない、またはパートナーの生死が不明」
「本年中の所得の見積額が48万円以下の児童」
「受給者である親の合計所得金額が135万円以下」の場合に記入
扶養の種類をまとめると、以下のとおりです。
区分 | 対象(12月31日時点) | 控除額 | |
---|---|---|---|
一般の控除対象扶養親族 | 16歳以上 | 38万円 | |
特定扶養親族 | 19歳以上23歳未満 | 63万円 | |
老人扶養親族 | 同居老親等以外の者 | 70歳以上 | 48万円 |
同居老親等 | 70歳以上かつ納税者又はその配偶者の直系の尊属で、 普段同居している |
58万円 |
【参考】国税庁 No.1180 扶養控除
- 複数の会社でアルバイトをしている従業員、年末に在籍していない従業員、1年間の給与が2,000万円を超えている従業員、災害減免法によりその年度の所得税の源泉徴収の徴収猶予や還付を受けた従業員は、扶養控除等申告書の提出対象となる。
- A〜D欄および単身児童扶養者欄は、条件に当てはまる従業員のみ記入する。
保険料控除申告書
給与所得者の保険料控除申告書は、生命保険料や地震保険料等の支払いがあった場合に記入します。
保険料控除申告書の各項目の記入対象者
- 最上部の欄:対象従業員全員
- 生命保険料控除欄:一般生命保険や介護医療保険、個人年金保険の支払いがある従業員
- 地震保険料控除欄:火災保険に加入し、地震保険特約をつけている従業員
-
社会保険料控除欄:対象従業員全員
(従業員自身が1年間に支払った社会保険料を記入)※ただし、会社で差し引かれた健康保険料や介護保険料、厚生年金保険料等は除く - 小規模企業共済等掛金控除欄:勤務先の給与や賞与から差し引かれている以外に、欄内の契約に該当する掛金を支払っている従業員
配偶者特別控除申告書
配偶者がパートやアルバイトをしている場合、配偶者特別控除申告書を提出することで控除が受けられます。
ただし、給与所得者の所得金額が1,000万円を超える、または配偶者の所得金額が123万円を超える場合、配偶者控除等の対象外となるため、配偶者控除等申告書の提出は必要ありません。
配偶者特別控除申告書の記入項目
- 最上部の欄
- 本人の合計所得金額(見積額)
- 配偶者の合計所得金額(見積額)
- 配偶者控除額または配偶者特別控除額
- 本人の合計所得金額の見積額
- 配偶者の本年中の合計所得金額の見積額
- 控除額の計算
「本人の合計所得金額(見積額)」および「配偶者の合計所得金額(見積額)」の各記入欄の書き方については以下の通りです。
合計所得金額(見積額)欄の書き方
- 収入金額等欄:給与明細や直近の源泉徴収票を参考に見積もった収入金額を記入
- 所得金額欄:裏面の「3所得の区分」の【①給与所得】を参考に、計算した所得金額を記入
- 合計額欄:算出した金額を各「合計所得金額の見積額」に転記
控除額の計算欄には、「本人の合計所得金額の見積額」および「配偶者の本年中の合計所得金額の見積額」の判定結果をもとに、表から当てはまる金額を記入します。
- 令和2年からの様式変更により、配偶者控除等申告書は、「基礎控除申告書」および「所得金額調整控除申告書」との兼用様式となります。
住宅借入金等特別控除申告書
確定申告で住宅ローン控除の適用を受けた従業員は、申告の翌年からは年末調整で控除を受けることが可能です。
住宅借入金等特別控除申告書を書く前に用意する書類
- 「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書
- 年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書
- 住宅ローン年末残高証明書
申告書の年度が正しいか確認し、各項目を記入していきます。
「新築又は購入に係る借入金等の年末残高」には、12月末日実現在の住宅ローン残高を記入します。
「家屋又は土地等の取得対価の額」は、当初の確定申告の情報をもとに転記します。
「取得対価の額に係る借入金等の年末残高」には、「新築又は購入に係る借入金等の年末残高」または「家屋又は土地等の取得対価の額」のいずれか少ない金額を記入します。
申告書を書いたら給与所得の源泉徴収票の原本を貼付し、申告書と一緒に提出しなければなりません。
年末調整関連書類の作成時に起こりうるトラブルと対処法
年末調整関連書類の提出は1月31日が期限となるため、手続きが遅れないよう従業員に正しい書き方を伝えて申告書を提出してもらわなければなりません。
また、関連する手続きも多く提出先も異なることから、トラブルを起こさないよう対処が必要です。
年末調整で想定されるトラブル・課題
- 従業員への申告書配布配付や回収に伴う負担
- 従業員の申告書記入ミス等の確認および修正対応による負担
- 改正部分の適用間違い
- 控除内容の変更による再計算
トラブルをなくし効率的に年末調整を終わらせるには、年末調整そのものをシステム化するなどの対処を事前におこなっておきましょう。
トラブルの対処方法
- 対象従業員への説明
- 年末調整の書類提出の促し
- 人的ミスの防止
- 業務簡略化のため電子申請システムの導入
年末調整の書き方を従業員へ正しく伝えましょう:まとめ
年末調整をおこなううえで、従業員から以下の年末調整関連の申告書・書類を速やかに集めることが重要です。
必ず提出が必要な年末調整関連の申告書
-
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
※マイナンバーの記載は原則必要
該当する場合に提出が必要な年末調整関連の申告書
-
生命保険料や地震保険料などの保険料を支払った従業員
→給与所得者の保険料控除申告書と控除証明書類 -
配偶者控除を受けられる従業員
→給与所得者の配偶者控除等申告書 -
住宅ローンを利用した従業員
→住宅借入金等特別控除申告書 -
転職で中途入社した従業員
→前職の「源泉徴収票」
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