基礎知識
業務の効率化に欠かせない年末調整のweb化とは?

年末調整は従業員と紙ベースの書類をやりとりするのが常識でした。
しかし、web化によって書類をプリントアウトする手間が省けるようになり、経理、総務部門において、事務作業の効率化が図れるようになります。ところが、年末調整のweb化を導入するためには、事前の手続きが必要となります。
そこで、そもそも年末調整のweb化とは何か、web化による具体的なメリット、導入手続きのルールについて説明します。
目次
そもそも年末調整のweb化って何?
今までの年末調整は紙ベースの書類を預かり、源泉徴収票をプリントアウトして従業員に渡していましたが、年末調整のweb化により、次の書類について電子化が認められることになります。
(1)次の種類を電子保存する
下記の書類は会社名、本人の情報などをweb上で入力することができます。
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給与所得者の扶養控除等申告書
扶養控除などの所得控除を受けるために必要な本人や扶養している家族に関する情報を記載し申告する書類です。 -
給与所得者の配偶者控除等申告書
配偶者控除や配偶者特別控除を受けるために必要な配偶者のパート収入などに関する情報を記載し申告する書類です。 -
給与所得者の保険料控除申告書
生命保険料や地震保険料の保険料控除、社会保険料控除を受けるためにそれらの支払額を申告する書類です。
(2)源泉徴収票を電子交付または電子閲覧できるようにする
次の方法を採用する場合、必ずしも源泉徴収票をプリントアウトしてすべての従業員に渡す必要がなくなりました。
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電子メールを利用する方法
源泉徴収票を電子メールの添付ファイルで送信する方法です。 -
社内LAN・WANやインターネットなどを利用して閲覧できるようにする方法
サーバー内に保存されている源泉徴収票を閲覧する方法です。 -
磁気媒体に記録して交付する方法
フロッピーディスク、MO、CD-ROMなどの磁気媒体に記録して従業員に交付する方法です。
年末調整の書類を電子保存に切り替えるメリット
年末調整の書類を紙ベースで保存するのと比べて、電子保存に切り替えるメリットは2つ挙げられます。
(1)経理、総務部門の手間が省ける
年末調整の書類を紙ベースで保存する場合、次のような手間がかかります。
- 給与所得者の扶養控除等申告書、配偶者控除等申告書、保険料控除申告書の書類に給与支払者(社内)の情報をゴム印で押す。
- それらの書類をすべての従業員に配布する。
- 源泉徴収票をプリントアウトする。
電子保存に切り替えることでこれらの手間を大幅に解消できます。
また、年末調整の書類を従業員が訂正した場合、紙ベースで保存している場合は、経理、総務部門がシステム上の入力情報を訂正する必要がありました。
しかし、電子保存にすることで従業員自身がweb上で訂正すれば、訂正後の情報がシステム上に反映されます。
(2)従業員の手間が省ける
そもそも年末調整の各種申告書は国税庁のホームページ上で入力することができます。
紙ベースで保存する場合、印字された各種申告書を手で記入します。そのため、たとえば生命保険料などの金額を誤記入した場合、訂正印を押し、空いたスペースに正しい金額を記入しなければなりませんでした。
しかし、電子保存に切り替えることで誤記入の情報を簡単に上書き訂正することができます。
年末調整の書類を電子保存するときのルール
年末調整の書類を電子保存するためには、次のルールが設けられています。
(1)承認申請書を税務署へ提出する
電子保存をするためには事前に税務署へ承認申請書を提出し、承認を得なければなりません。
承認が得られるタイミングは提出した月の翌月末日までに税務署から何も連絡がなければ承認されたことになります。
(2)従業員に事前承諾を得る
源泉徴収票を紙ベースでの交付から電子交付または電子閲覧に切り替える場合、従業員に事前承諾を得なければなりません。事前承諾を得る場合の書類に次の内容を記載することが奨励されています。
- 電子交付する書類の名称(源泉徴収票など)
- 電子交付する方法(電子メール、電子閲覧、磁気媒体など)
- 受信者ファイルへの記録方法(XML形式、PDF形式など)
- 交付予定日(毎年○月○日までに交付など)
- 交付開始日
(3)源泉徴収票はいつでもプリントアウトできるようにする
たとえば、従業員が医療費控除や初年度の住宅ローン控除で確定申告をする場合、源泉徴収票が必要となります。
そのとき、電子交付を受けた源泉徴収票を自宅でプリントアウトしたものは確定申告書の添付書類として認められません。あくまでも会社から紙ベースで交付を受けた源泉徴収票に限られます。
まとめ
年末調整のweb化が社内に浸透すれば業務の効率化につながります。
たとえば、引っ越しによる住所変更の場合、コンピューター上のデータを書き換える作業を従業員自身が行うことで経理、総務部門の手間が省けます。
しかし、年末調整のweb化を浸透させるためには従業員に対する事前周知が求められます。たとえば、源泉徴収票の電子交付は従業員の事前承諾が必要となります。
つまり、経理、総務部門と従業員との双方が理解することにより、年末調整のweb化が社内に浸透するといえます。
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