基礎知識
NISAは年末調整が必要? 人事労務担当者が知っておきたいNISAとは

NISAやつみたてNISAは、税制優遇を受けながら資産運用・資産形成ができる投資制度です。
NISAと年末調整に関しては、以下のポイントを意識すると理解が深まります。
- NISA・つみたてNISAの年末調整や確定申告の必要性
- NISA・つみたてNISAが課税・確定申告が必要な例
- NISA・つみたてNISAは利用できる期間や取り扱う商品が異なる
- NISA口座・つみたてNISA口座の利益は、原則として非課税
目次
NISA・つみたてNISAとは
NISAとは、毎年一定金額の範囲内で購入した金融商品が生み出した利益が非課税になる制度(少額投資非課税制度)です。
投資で得た利益には、通常20.315%の税金がかかりますが、NISAを利用すれば、原則非課税の優遇が受けられます。
同じく利益が非課税になる制度に確定拠出年金(企業型DC・iDeCo)が挙げられますが、NISAとは異なる制度です。
NISAには、利用できる期間や取り扱う商品が異なる「NISA」と「つみたてNISA」があり、どちらも節税効果があります。
[NISAとつみたてNISAの比較]
NISA | つみたてNISA | |
---|---|---|
非課税対象 | 株式・投資信託等への投資から得られる配当金・分配金や譲渡益 | 一定の投資信託への投資から得られる分配金や譲渡益 |
非課税投資枠 | 年間120万円 | 年間40万円 |
利用可能な期間 | 非課税期間最長5年 | 非課税期間最長20年 |
【参考】金融庁 NISAの概要
【参考】金融庁 つみたてNISAの概要
- NISAによって得られた利益は基本的に非課税
- NISA・つみたてNISAの利用期間や非課税投資枠は異なる
- NISAとつみたてNISAは併用できない
証券口座の種類
証券口座には数種類の口座があり、投資で得た利益にかかる税金の扱いがそれぞれ異なります。
-
一般口座
投資をおこなう本人が年間取引報告書を作成し、確定申告が必要です。 -
特定口座(源泉徴収あり)
源泉徴収ありの場合、証券会社が年間取引報告書を作成するため、確定申告は原則不要です。 -
特定口座(源泉徴収なし)
源泉徴収なしの場合、証券会社が年間取引報告書を作成しますが、確定申告が必要です。 -
NISA口座・つみたてNISA口座
NISA口座・つみたて口座内での投資は非課税のため、確定申告は不要です。
原則、年末調整・確定申告が不要となる口座は、特定口座(源泉徴収あり)とNISA口座・つみたてNISA口座です。
NISA口座・つみたてNISA口座内での投資で得られた利益は、非課税となるため年末調整も確定申告も不要
NISAで課税されるケース
NISAを利用した投資でも、分配金や配当金の受け取り方法を「株式数比例配分方式」にしていない場合、分配金や配当金が課税対象となります。
[株式数比例配分方式とは]
分配金や配当金の受け取り方法をNISA口座にする方式
NISAを利用している従業員が株式比例配分方式を選択せず、一般口座や特定口座にしている場合、利益は課税対象となるため、確定申告が必要となる場合があります(後述)。
NISAは年末調整が必要ない【従業員への案内方法】
NISAやつみたてNISAは、基本的に税金がかからないため、会社で年末調整をおこなう必要はありません。
NISAを利用している従業員には、会社では年末調整をおこなわない旨を案内しましょう。
通常NISAは年末調整・確定申告も不要ですが、下記に当てはまる、かつ利益が20万円を超えていれば確定申告が必要です。
- 分配金や配当金の受け取り方式を「株式数比例配分方式」以外にしている
- 外国株を売却して為替差益が発生している
従業員が上記のケースに当てはまる場合、確定申告が必要と促しましょう。
なお、従業員が確定申告をおこなう場合、総合課税と申告分離課税を選ぶことができます。
総合課税
総合課税とは、分配金や配当金を、給与所得や事業所得などの「ほかの所得」と合算して税金を計算する方法です。
- 分配金や配当金に対し、配当控除を受ける
- 累進課税であるため、所得が低いほど税率が低い
従業員の課税所得の合計額が900万円以下の場合、総合課税を選ぶと節税効果が高くなります
申告分離課税
申告分離課税とは、NISAで得られた利益を、給与所得や事業所得などの「ほかの所得」とは別に税金を計算する方法です。
- 分配金や配当金などの税率は、源泉徴収の税率と同じ20.314%
- 「損益通算」することで、利益と損失を相殺できる
複数の証券会社の口座を利用し、別々の口座で利益と損失がある場合、損益通算を選択すると利益と損失を相殺できます。
年末調整とNISAに関連する想定トラブルと対処法
年末調整とNISAに関連して、以下のようなトラブルが想定されます。
- NISAと年末調整に関する問い合わせ対応
- 確定申告が必要な従業員の申告漏れ
- 従業員への個別説明による業務負担の増加
- NISAは基本的に年末調整の必要がない旨を従業員へ案内する
- 従業員へ確定申告が必要となる例を説明する
- 年末調整クラウドシステムを導入し、年末調整業務を効率化する
NISAと年末調整:まとめ
NISAで得た利益は原則非課税となるため、企業は年末調整をおこなう必要はありません。
しかし、確定申告が必要な場合、該当する従業員には確定申告をおこなってもらいましょう。
- NISAは基本的に非課税のため、年末調整は必要ない
- 分配金や配当金の受取方法を「株式数比例配分方式」にしていない場合は課税される
- 従業員がNISAによって得た利益が20万円を超えた場合、確定申告が必要となる場合がある
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