基礎知識
年末調整の計算方法とは?必要書類や計算の流れ・手順をカンタン解説

年末調整の手続きを行うには、計算方法や必要書類を把握しておく必要があります。
- 年末調整で控除すべき項目
- 年末調整の計算に必要な書類・資料のダウンロード先
- 年末調整の手続きで想定されるトラブルと対処法
- 年末調整業務を大幅削減する方法
年末調整の計算では、以下のポイントを意識すると理解が深まります。
- 年末調整は対象となる従業員ごとの計算をする
- 年末調整の計算には多くの情報が必要となる
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以下で詳しく解説します。
目次
年末調整の計算方法・手順
年末調整とは、従業員に支払った1年間の給与および源泉徴収した所得税額を再計算して年調年税額を求め、過不足分を調整する手続きです。
6ステップでそれぞれの計算方法を解説します。
給与支給額・社会保険料・源泉徴収税額の集計
従業員に支払った1年間(1月~12月)の給与支給額から年間収入額を算出します。この際、給与から控除した社会保険料や源泉徴収した所得税も集計します。
給与所得控除額の差し引き
年間収入額から、収入額に応じて定められた給与所得控除額を差し引き、給与所得額を算出します。
給与所得額=年間収入額-給与所得控除額
2020年分以降の給与所得控除額は、次の表のとおりです。
年間収入額 (給与所得の源泉徴収票の支払金額) |
給与所得控除額 |
---|---|
180万円以下 | 180万円以下 収入金額×40%-10万円 55万円に満たない場合には、55万円 |
180万円超 360万円以下 | 収入金額×30%+8万円 |
360万円超 660万円以下 | 収入金額×20%+44万円 |
660万円超 850万円以下 | 収入金額×10%+110万円 |
850万円超 | 195万円(上限) |
給与所得控除額は、年間収入額によって異なります。

所得控除額の差し引き
給与所得額から従業員から提出された控除申告書を元に所得控除額を差し引き、課税所得を算出します。
課税所得=給与所得額-所得控除額
年末調整で差し引かれる所得控除には、以下のような種類があります。
[所得控除]
- 社会保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 扶養控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 基礎控除 など
所得控除は、従業員から回収した申告書の記載内容をもとに計算します。

所得税率の掛け算と控除額の差し引き
課税所得に所得税率を掛け、控除額を差し引くと1年間の所得税額が算出できます。
所得税額=課税所得x税率-控除額
課税所得 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
たとえば課税所得が400万円の場合、求める所得税額は次のとおりになります。
400万円×0.2-427,500円=752,500円
所得税率および控除額は、課税所得によって異なります。
住宅ローン控除額の差し引き
従業員が住宅ローン控除を受ける場合は、所得税額から住宅ローン控除額を差し引きます。
住宅ローン控除が差し引かれた額が、年調所得税額となります。
年調所得税額=所得税額-住宅ローン控除額
[補足情報]
1年目に確定申告で住宅ローン控除の適用を受けた従業員は、2年目から年末調整で控除を受けることが可能です。
その場合、従業員に住宅借入金等特別控除申告書の記入・提出をしてもらう必要があります。
源泉徴収税額と年調年税額の比較
年調所得税額に復興特別所得税の102.1%を乗じて、年調年税額を算出します。
年調年税額=年調所得税額×102.1%
1年間に源泉徴収した所得税額と年調年税額を比較し、過不足分の精算を行います。
- 年調年税額が源泉徴収税額より少ない場合→超過分を還付
- 年調年税額が源泉徴収税額より多い場合→不足分を追加徴収
[補足情報]
原則として、年末調整過不足の精算は年末調整をする月に処理します。
オフィスステーション 年末調整へ
年末調整の計算に必要な書類・資料
年末調整の計算には、次の5つの書類・資料が必要になります。
申告書をダウンロードPDF(822KB)※国税庁の公式HPからのダウンロードとなります。
[補足情報]
源泉徴収簿は、国税庁が上記のフォーマットを提供していますが、給与計算ソフトから出力した賃金台帳を兼ねた書式の利用でも差し支えありません。

扶養控除等申告書
扶養親族等が扶養控除の対象となるか確認し、年末調整の計算に使用します。
申告書をダウンロード PDF(3050KB)
※国税庁の公式HPからのダウンロードとなります。
- 給与所得者本人および控除対象扶養親族等のマイナンバーを記載する必要があり、給与の支払者はマイナンバーの本人確認を行う義務があります。
- 障害者以外の16歳未満の子どもは扶養控除の対象外です。
保険料控除申告書
保険料控除の対象となるか確認し、年末調整の計算に使用します。
[補足情報]
生命保険料控除の内容確認には、申告書に添付された「保険料控除証明書」を利用します。
配偶者特別控除申告書
配偶者の年間所得が、配偶者特別控除の対象となるか確認し、年末調整の計算に使用します。
申告書をダウンロード PDF(2,358KB)
※国税庁の公式HPからのダウンロードとなります。
【参考】国税庁 給与所得者の基礎控除、配偶者(特別)控除及び所得金額調整控除の申告
[補足情報:配偶者特別控除を受けるための要件]
- 控除を受ける納税者本人の年間所得が1,000万円以下であること
- 配偶者が民法の規定による配偶者(内縁関係は該当しない)であること
- 配偶者が控除を受ける人と生計を一にしていること
- 配偶者が、その年に青色申告者の事業専従者としての給与の支払いを受けていない、または白色申告者の事業専従者でないこと
- 配偶者の年間所得が38万円超123万円以下であること
- 配偶者が、配偶者特別控除を適用していない
- 2020年分以降、配偶者特別控除の対象となる配偶者の年間所得は、38万円超123万円以下から48万円超133万円以下に変更されます。
- 2020年からの様式変更により、配偶者控除等申告書は、「基礎控除申告書」および「所得金額調整控除申告書」との兼用様式となります。
住宅借入金等特別控除申告書
住宅ローン残高に応じた住宅ローン控除額を確認し、年末調整の計算に使用します。
住宅借入金等特別控除申請書は、税務署から自宅に送られてきます。
【参考】国税庁 給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書の記載例
[補足情報]
年末調整で住宅ローン控除が適用になるのは、控除を受ける2年目以後の年分です。
住宅ローン残高の確認には、申告書に添付された「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」を利用します。
年末調整を円滑に進めるためには、従業員からできるだけ早く、正しい情報を集めることが重要です。従業員の方々に正しくい情報を提出してもらうために、変更内容を説明するための資料作成や説明会開催など、管理部門の方々に大きな負担が生まれます。税制改正や様式変更にシステムで対応して管理部門と従業員双方の負担を軽減できるのが「オフィスステーション 年末調整」です。
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年末調整の計算に伴うトラブルと対策
労務担当者は、大量の書類を扱いながら年末調整の計算ミスや確認漏れがないように慎重に手続きを進めなければならないため、以下のトラブルが想定されます。
- 従業員の申告書提出漏れによる作業の遅れ
- 未回収者への個別連絡やチェック作業、計算など業務の肥大化で残業時間激増
- 年末調整に必要な書類の紛失
このようなトラブルにも対処できるよう、事前に以下のような対処方法を検討しておきましょう。
- 従業員への申告書提出漏れ防止のための指導
- 業務簡略化および人的ミス防止のため年末調整クラウドシステムの導入
年末調整の計算の流れ:まとめ
年末調整は、源泉徴収簿と従業員から回収した申告書類の内容をもとに、従業員一人ひとりの1年間の給与および源泉徴収した所得税額を再計算し、過不足分の調整を行います。
- 給与支給額・社会保険料・源泉徴収税額の集計
- 給与所得控除額の差し引き
- 所得控除額の差し引き
- 所得税率の掛け算と控除額の差し引き
- 住宅ローン控除額の差し引き
- 源泉徴収税額と年調年税額の比較
オフィスステーション年末調整を使えば、給与システムと連携することで年末調整の計算がかんたんに行えます。
年末調整の計算に必要な申告書の配付・回収作業がなくなるので、年末調整業務にかかる時間を100時間も削減することができます。
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