基礎知識
源泉徴収票とは別物!給与支払報告書のすべて

給与支払報告書は個人別明細票と総括表にわかれます。個人別明細書は源泉徴収票と内容が同じなので両者を混同している方がいますが、個人別明細書は提出先が市町村ですので源泉徴収票とは異なります。また、源泉徴収票にはない総括表という書類もあります。この記事では、略して「給報」(きゅうほう)と呼ばれることもある給与支払報告書について解説しますので、この機会に一度手続きを確認しておきましょう。
目次
個人別明細書 -源泉徴収票と同じ内容-
個人別明細書の内容は源泉徴収票と同じです。1月1日現在、給与を支払っている事業所等は原則として前年1年のうちに給与を支払った役員・従業員全員分の個人別明細書を作成し提出しなければいけません。
例外として、すでに退職している役員・従業員のうち、前年に支払った給与の合計が30万円以下の方については法令により提出が免除されています。ただし、市町村によっては提出が必要な場合があるため、提出する市区町村に確認しましょう。
個人別明細書を作成する際は、特に以下の点に注意しましょう。
<個人別明細書を作成する際の注意事項>
・平成24年度から16歳未満の扶養親族は扶養控除の対象ではなくなりました。しかし、16歳未満の扶養親族の数は住民税の非課税限度額に影響します。
・前々年に1000枚以上の源泉徴収票を提出した場合には、eLTAX(エルタックス)または光ディスク等による提出が必要です。
・会社が給与を支払っている場合、役員・従業員の住民税は原則として給与から天引きして納付しなければいけません。この納税方法を特別徴収といいます。
たとえば以下のような理由がある場合には、役員・従業員が直接納税する、普通徴収を行うことができます。市町村ごとに普通徴収が認められる理由が定められていますから、それぞれの市町村の様式を確認しておきましょう。
【普通徴収が認められる理由(例)】
なお、1の総従業員数には他市の従業員も含まれています。他市在住の従業員を含めて3人以上の場合、対象としません。ただし、2から6の理由に該当していて、普通徴収とする方を除く人数とします。
そのほか、普通徴収を行う場合には個人別明細書の作成欄に普通徴収をする理由を記載するとともに、「普通徴収切替理由書兼仕切書」の添付が必要です。
総括表-個人別明細書の集計表-
提出先の市区町村ごとに総括表を作成する必要があります。総括表には以下の項目を記入します。提出先の市区町村により多少内容が異なることがありますので、より詳細な内容については各市区町村が作成しているガイドをご参照ください。
<総括表に記入する内容>
・平成28年分(平成29年1月末までに提出するもの)から、法人番号の記載が必要となりました。もしも法人番号がわからないという場合は、国税庁の法人番号公表サイトで調べることが可能です。
・「年間分」と「退職者分」のどちらかを選択します。原則として年間分を選択しますが、提出する個人別明細書がすべて退職者分の場合には退職者分を選択します。
・事業内容を記入します。
・給与支払報告書を提出する市区町村の数を記入します。
・昨年中に給与を支払った役員・従業員の数を記入するのが一般的ですが、詳しくは市町村が発行する記入ガイドをご参照ください。
・総括表を提出する市区町村に個人別明細書を提出する対象となる人数を記入します。市区町村によっては、普通徴収の人数と特別徴収の人数を分けて記入する必要があります。
給与支払報告書の提出先や提出期限
給与支払報告書は、従業員が1月1日に住んでいる市区町村に1月31日までに提出しなければいけません。たとえば平成29年の給与支払報告書を提出する場合、平成30年1月1日に各従業員が住んでいる市区町村ごとに提出しなければいけません。もし、内容や提出先を間違えた場合には「給与支払報告書誤報届出書」を提出することで取り消すことが可能です。
給与支払報告書の提出を受けた市区町村は、そのデータを住民税と国民健康保険料の計算のために利用します。したがって、給与支払報告書の提出が遅れてしまうと住民税や国民健康保険料の請求を受けるのが遅れてしまい、従業員に迷惑をかけてしまうことがありますので注意しましょう。
まとめ
給与支払報告書は見た目や内容が源泉徴収票に似ていますから、源泉徴収票を税務署に提出したことにより給与支払報告書を市区町村に提出するのを失念してしまうことがあるかもしれません。特に個人事業主の場合にはご自身の確定申告と並行して作業しなければいけませんから、ついつい後回しになってしまうこともあるでしょう。
しかし、提出しない場合には罰則規定もありますので、安易に考えずに必ず提出しましょう。