基礎知識
年末調整と確定拠出年金は関係ある? 企業型DC・個人型DCへの企業側の対応まとめ

年末調整の控除手続きとして、生命保険料控除や配偶者控除などが一般的ですが、企業型DCや個人型DCと呼ばれる『確定拠出年金』も年末調整の控除対象となります。
- 確定拠出年金が含まれる年末調整の控除項目
- 企業型確定拠出年金・個人型確定拠出年金の年末調整の手続きに必要な書類とダウンロード先
- 申告書や証明書を紙で集めなくて済む方法
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目次
確定拠出年金の年末調整への影響
確定拠出年金とは、企業や個人が毎月一定の掛け金を積み立てて運用する年金制度です。
確定拠出年金には、企業型と個人型の2種類があります。
- 企業が毎月一定の掛け金を拠出(給料から天引き)し、従業員が運用をおこなう企業年金制度
- 従業員が転職しても、転職先に企業型DCがある場合は転職先で加入が可能
- iDeCoと呼ばれる私的年金制度
- 個人が毎月一定の掛け金を拠出し、運用も個人がおこなう
確定拠出年金で支払った掛け金は、年末調整の控除対象となります。
年末調整と確定拠出年金の関係においては、以下のポイントを意識すると理解が深まります。
- 確定拠出年金は所得控除の対象となる
- 確定拠出年金には「企業型確定拠出年金」と「個人型確定拠出年金」の2種類がある
- 「企業型確定拠出年金」と「個人型確定拠出年金」の年末調整における対応方法は異なる
小規模企業共済等掛金控除に該当
確定拠出年金で支払った掛け金は、年末調整の小規模企業共済等掛金控除に該当します。
小規模企業共済等掛金控除の計算には、給与所得者の保険料控除申告書を使用します。
※ただし、令和2年より様式の変更が予定されているため、注意が必要です。
【引用】令和2年分給与所得者の保険料控除申告書(PDF/865KB)
様式をダウンロード PDF(454B)※国税庁の公式HPからのダウンロードとなります。
小規模企業共済等掛金控除は、保険料控除申告書の右下の欄に記入します。
令和2年分(2020年)の年末調整では、保険料控除申告書のレイアウトが変更となる可能性があります。
所得控除による所得税還付
所得控除とは、個人の状況に応じて、所得金額から一定額を差し引く制度です。
確定拠出年金で支払った掛け金は全額、所得控除の対象となります。
年末調整で所得控除の手続きをおこなうことにより、従業員に所得税の還付がおこなわれます。
年末調整における企業型確定拠出年金への対応
企業が従業員分の掛け金を拠出する企業型確定拠出年金は、その掛け金額を把握している企業が年末調整の手続きをおこないます。
保険料控除申告書への記載
年末調整で企業型確定拠出年金の控除をおこなうためには、企業が保険料控除申告書の記入をおこないます。
- 小規模企業共済等掛金控除欄の『確定拠出年金法に規定する企業型年金加入者掛金』欄に、従業員がその年の企業型確定拠出年金で払った掛け金の総額を記入する。
- 合計(控除額)欄には、小規模企業共済等掛金控除に該当する他の種類の掛け金総額と合わせた額を記入する。
【出典】令和2年分給与所得者の保険料控除申告書(PDF/865KB)
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源泉徴収票への表記
確定拠出年金の掛け金は、源泉徴収票において社会保険料と同様の扱いとなります。
- 『社会保険料等の金額』欄の内訳(上部)に、確定拠出年金の掛け金合計額を記入
- 『社会保険料等の金額』欄の下部に、社会保険料と確定拠出年金の掛け金合計額を合わせた金額を記入
給与所得の源泉徴収票を使用します。
※国税庁の公式HPからのダウンロードとなります。
年末調整における個人型確定拠出年金(iDeCo)への対応
従業員が掛け金を拠出する個人型確定拠出年金は、年末調整で従業員が自ら申告をおこなう必要があります。
保険料控除申告書への記載指示
年末調整で個人型確定拠出年金の控除をおこなうためには、従業員に保険料控除申告書の記入指示をします。
【出典】令和2年分給与所得者の保険料控除申告書(PDF/865KB)
- 小規模企業共済等掛金控除欄の『確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金』欄に、従業員がその年の個人型確定拠出年金で払った掛け金の総額を記入
- 合計(控除額)欄に、小規模企業共済等掛金控除に該当する他の種類の掛け金総額と合わせた額を記入
掛金払込証明書の受け取り
年末調整で個人型確定拠出年金の控除をおこなう場合、例年10月頃に国民年金基金連合会から従業員宛に届く『小規模企業共済等掛金払込証明書』を受領しなければなりません。
証明書には、その年に個人型確定拠出年金でいくら掛け金を積み立てたか記載されています。
年末調整における確定拠出年金の手続きでのトラブルと対処方法
年末調整で確定拠出年金の手続きでは、トラブルが発生しがちです。
- 申告内容の記入指示やチェックに伴う担当者の残業時間の増加
- 申告書の配付・回収に伴うコスト発生
- 控除証明書の受領忘れ・紛失
このようなトラブルにも対処できるよう、対処方法を決めておきましょう。
- 個人型DCの対象となる従業員への個別説明および申告書類提出の喚起
- 申告書のデータ作成や必要書類の添付がクラウドでおこなえる電子申請システムの導入
年末調整と確定拠出年金:まとめ
確定拠出年金は年末調整でおこなう控除の対象となります。
企業型か個人型によっても手順が異なるため、手続き方法を間違えないようにしましょう。
- 企業型確定拠出年金は企業が申告書に記入をおこなう
- 個人型確定拠出年金は従業員が申告書に記入をおこなう
- 確定拠出年金の掛け金は全額が所得控除の対象となる
労務担当の方は、想定されるトラブルを防ぐために、事前に対処をおこなっておきましょう。
「オフィスステーション 年末調整」は、従業員が2ステップで簡単に申告できるクラウド型人事労務管理システムです。
従業員への申告書の配付・回収の手間がなくなり、労務担当者の業務簡素化が期待できます。
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