- ①給与明細封入・配付時間の手間
- ②給与明細発行業務による教職員の負荷
- ③給与明細発行業務によるコスト
- ④紙の使用による環境への負荷(SDGsへの取り組み)
- ①電子化により年間で104時間の削減
- ②人為的ミスの減少および再発行手続きの撤廃が実現
- ③担当者1名あたり年間約20万円の削減
- ④電子化により使用する紙の量が激減
業務効率化および法人理念の実現を目指し、給与明細のデジタル化に着手
はじめに、事業内容について教えてください。
薗部さま : 常磐大学および短期大学と大学院、高校、中等教育学校、幼稚園など6校を運営しています。従業員数は常勤・非常勤を合わせて568名です。
橋本さま、薗部さまの業務はどのような内容でしょうか?
橋本さま : 私たちの所属する人事給与課は人事・労務・給与を担当し、課員は全体で7名です。給与に関する業務は私と薗部がメインで担当しております。
ありがとうございます。2022年に「オフィスステーション 給与明細」を導入されていますが、導入を検討されたきっかけについて教えてください。
橋本さま : 私は入職から15年にわたり人事給与課におりまして、異動などを挟み7年ぶりに古巣に戻ってきました。久しぶりに戻って、給与明細が以前と、まったく同じ紙での対応だったことに驚き、「電子化できないか」と考えたことがきっかけです。また紙の対応による問題を解決する必要もありました。
どのような問題が発生していたのでしょうか?
薗部さま :
給与明細書は、支給日当日の朝一番に各職員のメールボックスに届いている状態にしなければなりません。ただメールボックスを持っていない方もいますので、その方たちには所属する上長に直接、渡しにいく必要がありました。
また高校、中等教育学校などは大学と場所的に少し離れているので、給料日にきちんと届けるには当日ではなく、前日の午後までに作成済みにしておく必要があります。そういった作業の積み重ねがかなり手間となっていました。
橋本さま : 印刷・郵送作業については、3名が1営業日以上かけて対応していましたね。
薗部さま : はい。「別の職員の給与明細が届く」など配付作業中に起きる人的ミスを防止するために何度も封筒や給与明細書の数の確認などをおこなっており、作業工数が膨大なものとなっていたんです。
橋本さま :
さらに給与明細のWeb化は、本学が2019年から取り組んでいる「トキワ de SDGs」を実現するための方法でもありました。
この取り組みは、本学が世界各国の教育機関や国際機関と連携しながら、SDGs(持続可能な開発目標)にかかる活動を積極的に推進し、持続可能な未来社会の実現に向けてその一翼を担うというものです。
人事給与課は法人組織を根幹から支える役割を担っていますが、そういった部署が「環境負荷の高い紙での対応をおこなっていていいのか」という思いもありました。
ペーパーレス化によって理念の実現に貢献できるのではないかと考えたことも、導入のきっかけの1つになっています。
業務効率化と人的ミス防止、大学の取り組みへの貢献などを目的に給与明細システムを導入されたとのことですが、具体的にはどのように進められたのでしょうか?
薗部さま :
まず給与明細書のWeb化に費やせる金額をもとに、実現可能かどうかを確認する作業から始めました。
具体的には紙の給与明細の発行にかかるコストを人件費、封筒やコピー用紙、消耗品も含めて直近5年にわたり計算し、「オフィスステーション 給与明細」の導入・運用コストと比較して、導入の目途を立てました。
資料をまとめてから上長にプレゼンをおこない、導入決定後は検討メンバー3名で作業分担や進捗状況の共有を目的に、週1回の打ち合わせを続けました。
操作性・コスト面に加え、優れた拡張性と属人化しにくい使いやすさを重視
給与明細システムを導入されるにあたり、他社製品と比較・検討された点や、オフィスステーションを選定いただいたポイントについて教えてください。
橋本さま :
給与明細システムは種類によって価格も使い方もさまざまですが、本学での導入に関しては、「給与明細のWeb化」という1つの機能に注力できるシステムを検討し、3社に絞って製品のデモを依頼しました。
比較検討において重視したのはユーザーが操作しやすいこと、コスト面、拡張性の高さ、管理者のスキルやポテンシャルに左右されない製品であることの4点です。
どれも重要で優先順位がつけられなかったため、この4点を兼ね備えた商品を探しました。
ありがとうございます。「スキルやポテンシャルに左右されない」というのはどういうことでしょうか?
橋本さま : さまざまな機能が付いていても、操作が難しい製品は導入が難しいと思いました。大学は職員が一定期間で異動するので、担当者の能力を選ばず、どんな人でも使いやすい製品が理想だったのです。
それ以外の比較点として「拡張性の高さ」を挙げられていますが、これはどのような背景からでしょうか?
橋本さま :
人事給与課では給与明細のほかに採用や退職時の手続きなどもおこなっておりますので、今後はそういった業務のWeb化にも対応できる製品が望ましかったのです。
そもそも業務のWeb化を給与明細からスタートしたのは、実現可能なところから迅速に進めたかったためです。
多くの業務を処理できる製品は魅力的ではありますが、一度にすべてに対応しようとすると「導入までに時間がかかる」「莫大なコストを要するため、検討すらできない」などの恐れがありましたので、まずは実現可能なところから始めようと考えました。
現場の声を集め、ボトムアップの形で導入を検討されたのですね。
薗部さま : はい。デジタル化・ペーパーレス化の流れが一般化していることもあり、現場からの反対の声はほとんどありませんでした。
オフィスステーション導入時に苦労された点はありますか?
橋本さま :
現行の大学法人向け基幹システムとの連携です。現行の給与システムはバージョンアップを含めて10年以上使用しており、当時、その基幹システム導入に立ち会った職員が現在は在籍していません。
そのため給与項目のマスタで使われているものと、使われていないものの特定に時間がかかりました。オフィスステーションは自由度が高いので、データ移行後の苦労はありませんが、最初にデータを移す作業に手間がかかりました。
その問題をどう解決されたのか教えてください。
橋本さま : まずはオフィスステーションのカスタマーサポートに相談しました。カスタマーサポートの担当の方は問題解決に向けて迅速に対応してくれ、最終的に「地道にマスタを1つずつ確認しながら移すしかない」となり、そうしました(笑)。この作業により現行のシステムへの理解が深まったので、ある意味でよかったともいえます。
作業時間は約100時間/年、人件費は約20万円/年の削減を実現
オフィスステーションの使用にあたり、難しい点はありましたか?
薗部さま : 「操作方法について教職員から質問がくるかな」と予想していましたが、ほとんどなかったので、操作性については非常に使いやすかったのだろうと思います。
ではオフィスステーションの導入後、給与明細業務にどのような変化がありましたか?
橋本さま :
封入作業・配付時間・郵送料(一部)と郵送手続きなどの削減、再発行手続きの撤廃などの変化に加え、給与明細が確実に本人へ届くという安心感が生まれました。
具体的には年間約100時間、人件費・経費としては年間約20万円の削減となり、まだ確定ではありませんが、導入検討時に作成した資料の試算と同程度と考えています。
教職員の皆さまからの評判や、やり取りに関する変化などについて教えてください。
橋本さま :
給与明細をWeb化したこと自体が、「組織全体が変化してきた」という印象を教職員に与えたのではないかと考えています。
「電子化は手がかかりそうなイメージだったけれど、やってみたら楽になった。ほかにもできるのでは?」と感じてくれた部署もあるのではないかと。やや大げさかもしれませんが教職員の意識改革につながったのではないかと思います。
また今回の導入を経て、職員から「電子化は大変でしたね」と声をかけてもらうことが増え、コミュニケーションにおいても変化があったと感じています。
給与明細の効率化から始まる、「この先」を見据えた人事給与課の展望
業務の効率化により捻出した時間を使って、新たに取り組みたいことはありますか?
薗部さま :
今後の展開において必須項目である拡張性を最大限に活用していきたいです。
たとえば年末調整や採用時の手続きのWeb化をオフィスステーションでおこなっていくことも視野に入れています。
「給与明細のWeb化」という実績によって、効率化や業務改善の実現の可能性が多くの教職員に伝わったと思いますし、ここから変化をさらに広げていけるのではないかと期待しています。
人事給与課として、貴学の経営戦略と連動させたテーマや目標があれば教えてください。
橋本さま : 本学の中期計画に関していえば、人材の確保などが挙げられますが、具体的な取り組みについてはまだこれからです。今回の給与明細のWeb化のように現場から声を挙げて、新たな取り組みの実現に向けて進めていければと考えています。
では現在の人事・労務部において課題となっている点などはありますか?
橋本さま :
現状では教職員の年齢構成の偏りによる業務の属人化を懸念していますので、その解決策として経験者採用に力を入れたいと考えております。採用については、人事給与課が給与・労務ともに一貫して取り組む体制を作っていきたいです。
また、すでに働いている方に対してのアプローチとしては、働き方改革やワークライフバランスなどの観点から、より健康的な職場にしていきたいと考えています。
本学全体でこのような流れはあるのですが、このようなことを考えるには、「目の前の作業に追われる」という状態から脱し、余裕を持つ必要があります。給与業務や採用時の手続き業務をWeb化するなどして効率化を進めるとともに、「働きやすい環境作り」の実現に向けて本格的に進めていきたいと考えています。
本日は貴重なお話をありがとうございました!