「変化対応力を高める事業改革」を掲げ、DXの推進へ
まずは、御社の事業と社員数についてお教えください。
吉岡さま : JR西日本グループは、鉄道事業を核に、お客様の暮らしを支え、地域の社会、経済の発展に貢献することを使命としています。その中で、JR西日本では鉄道事業を主に担い、約2.7万名の社員がいますが、今回「オフィスステーション 年末調整」の導入は初年度ということもあり、このうち本社社員約3,000名を対象として試行を開始しました。
「オフィスステーション 年末調整」を導入するにあたり、社内ではどういったきっかけがあったのでしょうか?
吉岡さま :
当社では新型コロナウイルス感染症の拡大の影響を受け、2020年秋に「JR西日本グループ中期経営計画2022」の見直しを行いました。その中で、新たな軸として「変化対応力の向上~JR西日本グループデジタル戦略~」を掲げ、グループを挙げてデジタル化による業務変革などを通じて変化への対応能力を高めようとしているところです。
具体的には、2020年11月にデジタルソリューション本部を設置し、「JR西日本グループデジタル戦略」を策定し、「顧客価値の再構築」「鉄道システムの再構築」「従業員体験の再構築」に取り組んでいるところです。
「JR西日本グループデジタル戦略」という会社全体の戦略も踏まえ、こと年末調整については、作業性の高い業務も多く業務の大半をグループ会社に委託していたこともあり、WEB化による業務改善の余地があるのではないかと考えたところです。
「この煩雑な業務はなんだろう」進む年末調整の社内理解
「作業の多い業務の見直しを」ということですが、そこから業務改善項目に年末調整を選ばれたのには、何かほかにも特別な理由があったのでしょうか?
吉岡さま :
当社においては、年末調整の実施に当たっては対象者全員が紙に申請事項を記入した上で、会社に提出し、業務を委託していたグループ会社において膨大な労力をかけて、必要な確認作業を実施していました。
私自身も含めて年末調整については一利用者であったことから、課題認識を身近に感じられたことと、電車の中吊り広告などで他社の年末調整にかかる人事労務ソフトの広告を見る機会も増え、世の中でも広く一般的なクラウドサービスを活用し、単純に改善できるのではと思った次第です。
導入にあたり、社内決裁やシステム環境の整備については、難しさなどはなかったですか?
吉岡さま :
「基幹システムの改修」が発生するため、「費用対効果にかかる検証」はかなり慎重に行いました。
当社の場合、約2.7万名の社員がおり、基幹システムとオフィスステーションとの間でのデータ連携を人力で対応しようとすると膨大な労力が発生することから、基幹システムとオフィスステーション相互間でのスムーズなデータ連携に向けた「基幹システムの改修」が必要となりました。
「基幹システムの改修」に当たっては、費用面ではイニシャルコストとランニングコストをそれぞれ試算するとともに、効果面については委託業務の削減等を試算し、「費用対効果」を立証することで、社内での意思決定に繋げました。
その他、導入にあたって問題はなかったですか?
吉岡さま :
関係者の皆さま(エフアンドエム様※をはじめとして、システム改修を担うグループ会社や年末調整の実務を委託しているグループ会社の皆さま)の協力もあり、私自身としては「基幹システムの改修」に向けた意思決定以外については、大きな労苦なく進めることができました。
関係する社員の皆さまが年末調整の当事者でもあり、全ての業務処理が紙ベースという現状の運用にかかる煩雑さ・WEB化による効率化には共感を示して下さり、加えて全社的なDX推進という流れもあり、本施策を推進していくに当たっては、社内の心情的な理解は得やすかったように思います。
※「オフィスステーション」は株式会社エフアンドエムが運営しております。
費用面や機能面を考慮し、「アラカルト型」に軍配が上がる
今回「オフィスステーション 年末調整」を選定いただくにあたり、決め手となった部分や、他社との比較などはされましたか?
吉岡さま :
1番に「アラカルト型」という点で、年末調整機能だけを導入できたことです。費用面、機能面、他社での導入実績等も踏まえ、総合的に勘案して「オフィスステーション 年末調整」を選定しました。
他社製品との比較検討を行いましたが、その多くは「パッケージ型」であり、年末調整業務だけを導入するとなると機能もオーバースペックで、費用面でも相対的に高額でした。ランニングコストを含めたコスト面も含め、オフィスステーションを選定することになりました。
ありがとうございます。では、導入後の業務についてどのように変化したのか、教えてください。
吉岡さま :
グループ会社への委託という形態は変わっていませんが、委託業務量は文字通り半減しました。もともと紙での作業で、保険料控除申請書などは、保険料控除証明書との突合に加え、保険料控除額について全て手計算により確認を行っていました。今回の導入により、保険料控除証明書に記載された金額とシステムに入力された金額の突合で済むようになる等、確認作業にかかる労力が削減されたという声があがっています。
一方で、初回ということもありオペレーション面での課題も発見されました。
1番多かったのは、ログイン時のトラブルです。当社は個人情報保護の観点から、ログインは「Google Authenticator」を使った二段階認証を導入しています。配付したマニュアルの中でログイン後の操作は記載していたものの、十分な説明が不足していたことから、多くの社員から問い合わせがありました。ここは来年度、きちんと改善の上、周知していきたい部分ですね。
一部、紙でのサポートも取り入れつつ、初年度3,000名の導入をクリア
今回は約3,000名を対象にされたと伺いましたが、ログイン時の問題以外には、問題なくシステムを利用できましたか?
吉岡さま :
トラブルについては、二段階認証にかかるログイン時の問題以外については、問い合わせ等は多くなかったと伺っています。ただ3,000名の中には、一部、紙での申請を希望される社員もいたことから、そのような方々に対して紙で対応をしました。
総合すると大きなトラブルはなく、初年度は運用ができたのかなと思っています。
来年度は、どのような運用を目指されているのか、教えてください。
吉岡さま :
2022年度は全社員2.7万名を対象に、年末調整の電子化を行う予定です。そのため、今年の課題としてあった、二段階認証にかかるスムーズなログインにどう繋げていくかについては、きちんと改善の上、周知したいと考えています。
また、全社で年末調整を行う場合、どのような運用体制を構築するかについては今から考えていきたいところです。問い合わせを本社等で一括して受ける場合、問い合わせが殺到した場合には、十分に対応出来ないことが想定されます。そのようなことを見越して、問合せ先を分散できるなど、予め関係者とも連携して、必要な運用体制を構築していきたいと思っています。
ありがとうございました。伺った課題については、当社でも解決方法を模索し、皆さまを支えていけるよう、引き続き改善に努めてまいります。